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俺と文鳥と高校の時の話①


生まれたときから知っている姪っ子が、大学に合格したらしい。ずいぶん、小さい印象があった。この前まで中学生だったのに、もう大学生ということにびっくりした。春になると、時間の早さを痛感する。

春といえば、高校三年の卒業式を思い出す。

俺は、すべての大学に落ちて、浪人が決定して、ええいどうにもでなれってなかんじで、やさぐれていた。

卒業式ってのもはっきり覚えてない。俺はその頃性格が悪くて(今もけして、よくはないのだが)、いろいろイライラし、かっこよく言えばグレていた。かっこわるく言えば落ちこぼれていた。

卒業式の日になっても、俺はクラスメイトの半数以上の名前を覚えてなかった。友達は3人しかいなかったが、2人は双子だった。

卒業式の帰り、くだらねーななんて思って下宿先の旅館まで歩いて帰っていると、突然、クラスメイトが声をかけてきた。近所の薬局の息子だった。名前は覚えていない。

「俺ブン君、俺ブン君、ちょっと頼みたいことがあるんよ。僕と一緒に走ってくれん?」

「は?何をゆうとるん?」と俺。

「俺、俺ブン君に勝つために、最近ずっと走ってたんよ。」

「何それ?」

どうも、薬局屋の息子は、高校2年生の時に、リレーのアンカーだった俺の走りを見て、負けないために走りまくっていたとのこと。べつに彼が陸上部ってな訳ではなかった、彼はただの薬局の息子だったのだが、何か心に触れるものがあったようだ。彼は俺に勝つため、ずっと自主錬をしていたのだ。

「とりあえず、向こうの角まで」と彼が指差す。

俺は、卒業アルバムを無造作に道路に置いた。

二人で走った。ひたすら走った。どっちが勝ったか、まったく覚えてない。息が切れた。俺は足は速かったが、高校三年生の怠惰な暮らしがたたりひたすら疲れたことを覚えている。

息を切らしながら彼が言った。

「俺ブン君、ありがとね。」

彼は薬局に帰っていった。俺は下宿に帰った。

「青春っぽいこと急にしたくなりやがってあの野郎、恥ずかしいじゃねえか」なんて、当時、俺は思った。

それ以来、会っていない。春はもうそこまで来ていた。

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